歯が抜けてしまったら、どんな治療があるの?

歯が抜けてしまった

虫歯が進行してしまい、根っこの方にまで虫歯菌が感染してしまうと、歯を保存することができなくなります。

虫歯治療というのは、虫歯菌に感染してしまった部分をすべて削ります。感染してしまった歯の面積の割合がまだ感染していない歯の部分と比べて多いと、歯は噛む力に耐えらないため、残すことができません。

また、歯をすべて削ってしまったら、当然歯はなくなりますので、そういった状態を想像してもらえれば、虫歯が進行してしまった場合は歯が残せないということは理解しやすいかと思います。

歯は体の皮膚や粘膜と異なり、「硬組織」と呼ばれる硬い組織です。骨と同じ仲間に分類されますが、骨のように折れても再生はできません。ですから、感染してしまったところを完全に元の状態に治すことは今の医療ではできません。従って、歯を抜くしか方法がありません。

一番最初に歯を抜くことが多くなる歯は、前から数えて6番目の歯です。これは、だいたい6歳くらい生える、一番最初に生えてくる大人の歯です。

一番最初に生えてくるためか、虫歯にかかりやすく、そして、虫歯が原因でなくなってしまう確率が一番早い歯です。

この歯を抜くことになると、歯医者さんができる治療は主に3つとなります。

  1. ブリッジ治療
  2. 部分入れ歯治療
  3. インプラント治療

多くの人が選択するブリッジ治療について

ブリッジ

ブリッジ治療とは、よく差し歯などと呼ばれている治療です。なくなった歯を補うために、なくなってしまった前後の歯を削ってかぶせる治療となります。

ブリッジとは、日本語で「橋」という意味ですが、まさに歯と歯を橋渡しする治療です。

治療方法は、前後の歯を削ってかぶせ物をします。そのときに、橋のようにすることで、なくなった歯の部分も噛めるようになります。

ブリッジ治療のメリットは、部分入れ歯のように取り外しをしなくてすみ、今までのように噛むことができることです。

また、ブリッジ治療をすることで、歯が一本ないのと比べて、噛む効率も向上し、前後の歯がなくなった歯のところに傾くということを防止できます。

歯が傾くと、噛み合わせが変化し、顎が痛くなったり、肩こりがするようになったりするようになります。

では、ブリッジ治療のデメリットはどんなものがあるのでしょうか?

それは、前後の歯が健康な場合、虫歯でもないのにブリッジ治療のために削らなくてはいけないということです。

さらに、前後の歯に噛むたびに負担がかかるため、虫歯のリスクが向上します。

保険で行う治療は、このブリッジ治療と、部分入れ歯しか選択肢がないため、部分入れ歯の出し入れと、噛みやすさを考えると、歯科医師もブリッジ治療を勧めることが多いです。

また、歯がなくなってしまった本数が多ければ多いほど、このブリッジという治療はできなくなります。

歯が3本も抜けたのに、一番前と一番後ろの歯を繋いだとしても、あっという間に外れてしまう可能性が高いです。

これは、瀬戸大橋を思い浮かべていただきたいのですが、瀬戸大橋は、本州と四国をつなぐ大きな橋です。途中で淡路島という島があるからこそ、橋をつなぐことができます。もし、淡路島という途中の島がなければ、橋はつなげたとしても、中間地点で折れてしまうかもしれません。

これは、歯のブリッジ治療でも言えることです。

歯が抜けた本数が多ければ入れ歯の治療となります。

ブリッジは、虫歯リスクを向上させますが、定期的な歯の掃除をしにメインテナンスすることで、虫歯リスクを大幅に下げることができます。

逆に言えば、歯医者さんでメインテナンスを行わず、今までのような歯の磨き方では前後の歯が再び虫歯になって、入れ歯へのカウントダウンが始まります。

ですから、ブリッジ治療をしたら、その治療のデメリットを補うために、定期的な歯科検診を半年に一度受けましょう。

ブリッジの治療を受けた多くの患者さんを診察してきましたが、定期的な歯科検診を受けている方は、この歯を一本失った時点で、心を入れ替えて、お口の健康に気を使っています。

部分入れ歯治療について

部分入れ歯

部分入れ歯ときくと、小さな入れ歯をイメージする方が多いかと思いますが、実際はどのような治療なのか、部分入れ歯の治療におけるメリット、デメリットについてご紹介します。

部分入れ歯は、いきなり歯が1本なくなってする治療ではありません。歯が2本以上なくなってしまったときに行われる治療となります。

差し歯、専門用語ではブリッジ治療の適応でない場合に、部分入れ歯の治療となります。保険では特に部分入れ歯しか治療方法がないため、歯を失う本数が多いと部分入れ歯の治療しかありません。

歯を失った本数にもよりますが、右の奥歯を2本失ってしまうと、手前の歯1本では差し歯の治療はできないため、部分入れ歯となります。

しかし、部分入れ歯は歯を失った本数によってその大きさやデザインが異なります。完全に患者さん一人一人に合わせたオーダーメイドで作られます。

例えば上の右側の奥歯3本なくなったとしましょう。普通に考えると3本の人口の歯によって作られた小さな入れ歯になりそうですが、そうではありません。健康な反対側、つまり右の歯にばねをひっかけて固定できるような入れ歯を作ります。

もし、反対側にばねがない、失った右側の歯だけを補い、手前の歯1本にだけバネをひっかけるようなデザインだとしましょう。実際にこういった形の入れ歯は多いのですが、片方だけに噛む力が加わるため、シーソーのように、がたがた動いてしまいます。

ですが、反対側にまでバネをのばして、歯にひっかけることによって安定のいい部分入れ歯となります。

このように部分入れ歯は失った歯の場所や本数によって形、デザインが全く異なってきます。

ではこの部分入れ歯の治療のメリット、デメリットはなんでしょうか。

[メリット]

  • 差し歯と異なってバネをひっかける歯に少しだけバネがひっかかるように形を整えるため、歯の侵襲が小さい
  • 取り外しできるため、虫歯のリスクが下がる
  • 汚れがつきにくいので、他の歯が歯周病や虫歯になるリスクが下がる

[デメリット]

  • バネをひっかける歯に負担がかかり、歯周病や虫歯のリスクが上昇する
  • 異物感がある
  • 見た目が悪い

どうしても、ある歯を支えにして作られる部分入れ歯は、差し歯に比べると異物感が大きく、さらに取り外しができることから、完全にフィットするということはありません。

さらに奥歯が全部なくなってしまった場合、前歯にバネをかけるので、見た目が悪いといったこともおきてきます。

さらに、差し歯、ブリッジ治療に比べると、バネをかける歯には負担が小さいものの、なくなった歯の分まで噛む力を負担しなくてはいけないので、歯の寿命は当然短くなります。

また、しっかりと部分入れ歯は掃除をしないと、口臭がきつくなるというデメリットもあります。

このように部分入れ歯にはメリットとデメリットがあります。

さらに部分入れ歯はすぐに噛めるようになるわけではありません。何回か調整して初めてフィットするのが入れ歯の特徴です。

さらに、バネがかかっている歯をしっかりと磨き、定期的に歯医者さんで掃除してもらわなければ、あっという間に歯の寿命がきてしまいます。

部分入れ歯はまだ、総入れ歯になることを防げる段階です。ですから、残っている歯を大切に残すためにも定期的に歯医者さんでチェックしてもらいましょう。

もちろん、一度作ってしまえば、部分入れ歯は一生使えるわけではありません。毎日使うものですから、噛む力が毎日加わることで少しずつ変形し、だんだんあわなくなってきます。そのため、定期的に歯医者さんで微調整が必要です。

部分入れ歯になったら、必ず歯医者さんでの定期的な健診を受けましょう。

インプラント治療について

インプラント

インプラントという言葉を聞いたことがないという人はいないくらい、有名な治療となったインプラントの治療ですが、実は実際はどのような治療か、理解している人は少ないです。

インプラントをしてみたいけど、どんな治療なのか全然わからなくて不安という人もこの記事を読んで、どういった治療なのか、インプラント治療にはどんなメリット、デメリットがあるのかについて理解できるように、インプラント治療についてわかりやすく説明させていただきます。

インプラント治療とは、人工歯根という材料を歯がなくなってしまった歯ぐきの下の骨に打ち込む治療のことです。

人工歯根の材料として有名なものでは「チタン」を使用していることが多いです。このチタンは生体親和性といって体との相性がいいため、よく使われています。

言葉で表現すると、ネジのような材料を骨に入れるだけなのだから、棚をつくるみたいに簡単そうと思う方がいますが、それは大きな間違いです。

骨は私たちの大切な体です。血管や神経など、体の組織が骨の中には入っています。そういった血管や神経を避けて傷つけないように人工歯根を骨に埋め込まなくてはいけません。

また、家をイメージしてもらえばわかりやすいかもしれませんが、土台がしっかりとしていないと、どんなに耐震性のある強い家を建てても意味がありませんよね。それと同じで、土台である骨がなければ、インプラントにつかう人工歯根を使うことができません。

このように体の状態をしっかりと把握する必要があるため、インプラント治療をする前には、たくさんの検査をして、骨やその周囲の体の組織の状態を把握します。

検査結果によってインプラント治療ができないことがあったり、追加の手術をする必要があることもあります。

例えば歯周病によって歯を失った患者さんの場合、歯を支えていた骨も溶けてなくなってしまっていることが多いです。

そのため、骨の土台がありません。したがって骨を増やす手術を追加でインプラントの治療をする前に行う必要があります。

さらに歯周病の人では、歯茎も下がってしまっているため、歯茎に対する手術が必要なこともあります。

そしてインプラントは骨にチタンなど金属を打ち込む治療であるため、出血を伴います。血が止まりにくい薬を服用している方や全身的な病気を患っている人は、インプラント治療による出血の危険や、インプラント治療をしても、うまく体に生着しないこともあるため、全身疾患をもつ人は適応でないこともあります。

インプラント治療はもちろん、人工歯根を打ち込むだけが治療のすべてではありません。

人工歯根がうまく体につくまで、期間を置きます。うまく体に生着したら、次はかぶせ物の治療も必要となります。

骨に対する手術など追加の手術が必要な場合では、さらに期間がかかることは普通にあります。

1か月ではまず治療は終わりません。年単位の治療となるので、インプラント治療を受ける人はしっかりと歯科医師にどのような治療をどのくらいの期間必要かをしっかりと説明を受けましょう。

ではこのインプラント治療のメリット、デメリットはなんでしょうか。

[メリット]

  • 噛みやすい
  • 違和感がない
  • 見た目がいい
  • 他の歯を傷つけることがない
  • 入れ歯のように取り外しの手間がない

[デメリット]

  • 費用が高い
  • 治療期間が長い
  • 体の状態によってはインプラント治療を受けられないことがある

インプラント治療は保険診療ではありません。これは最近の治療であるため、歯科医師が習得するためには歯科大学を卒業後さらに勉強をしっかりと行った歯科医師しかできないからです。

さらに高度な医療機器を使って治療を行うため、設備の面や使用する材料が高いため、そもそもの費用が高いのです。

メリットデメリットを十分理解し、インプラント治療を受けたいという人は歯科医師としっかりと相談して、納得してから治療を受けましょう。

また、インプラント治療は歯の代わりになる治療ですが、歯と同じでしっかりとメインテナンスしないと長くはもちません。

むしろ天然の歯よりも、炎症などに弱いです。ですから、インプラント治療が終わっても歯科医院での定期的なメインテナンスが必須です。

そういったこともしっかりと理解してインプラント治療を受けてくださいね。

おわりに

治療が完了し、仕事が忙しかったりしたり、お口の健康を特に意識せずに、定期的な歯科検診を受けていないと、再び虫歯になって来院されてきます。

ぜひ、虫歯で失った歯を生涯で一本にしていただくためにも、定期的な歯科検診を受けてくださいね。

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