年をとると、だんだん足でつまづいて、転んでしまうことが多くなってしまいます。
ロコモティブシンドロームという言葉が注目されていますが、この転びやすくなってしまう原因の1つに筋力の低下が指摘されています。
ですが、この転びやすくなってしまう原因には実は、歯が大きく関係していることはあまり知られていません。
どうして歯を失うとバランスが悪くなってしまうのか、姿勢と噛み合わせの深い関係についてご紹介します。
噛みわせと姿勢の関係
多くの方が、噛み合わせが悪いから、肩が凝りやすい、偏頭痛がする、気が滅入るといった症状をなんとなく実感しているのではないでしょうか。
噛み合わせと姿勢は相互に深く関係していて、噛み合わせから姿勢が悪くなることもありますし、姿勢が悪いせいで、噛み合わせが悪化してしまうことがあります。
どちらにせよ、噛み合わせが悪いと、姿勢に悪影響を及ぼすため、歩いたり、運動するときに、全身の筋肉をバランスよく使うことが難しくなります。
うまく全身の筋肉を使えないと筋力にも左右に差がでてきます。
若いときはある程度、最低限体を動かしているので、そこまで左右差を感じなくても、年齢を重ねていくうちに、徐々に使っていない側の筋肉が衰えていくスピードが早くなり、歩くときにうまく歩けなくなって、転びやすくなってしまいます。
そして骨密度は徐々に低下していくので、転んでしまったことが原因で、骨折、さらにひどい場合は、そのまま立ち上がるのが難しくなって、介護が必要な状態にまで悪化してしまうことがあります。
決して珍しいことではなく、骨粗鬆症の方では転んでしまったことが原因でそのまま寝たきりの生活を強いられてしまったという方もいらっしゃいます。
こういった介護の面でも骨密度低下を予防するだけでなく、普段から転ばないように運動と、そして噛み合わせ、歯を大切にしておくことが重要ということです。
杖を買うなら、歯を大事に
歯は奥歯から徐々に虫歯や歯周病からなくなっていきます。
そして一番最後には下の前歯が残るという方が多いです。
なぜかというと、前歯は立ち上がるときに、支点になる場所だからです。
人は立ち上がるときに下を向いたまま立ち上がると危険ですので、かならず目線はまっすぐを維持して、立ち上がります。
そのとき、上下の前歯が当たってストッパーとなり、目線をまっすぐにしたまま立ち上がることができます。
もちろん、歯が全部揃って奥歯まであれば、その分、安定はいいので、しっかりと立ち上がることができ、バランスもいいです。
しかし、歯を失って徐々に歯の本数が減っていくことで、バランスが悪くなり、力点としてもどんどん弱くなっていくと、立ち上がるのが難しくなってきます。
そして最後の下の前歯がなくなってしまうと、起き上がるのがとても困難になります。
多くの歯科医師が臨床の現場で、背が曲がったおばあさんに総入れ歯をいれたとたんに、背がシャンとした、と経験的に実感しています。
これは、総入れ歯を入れてあげることで、立ち上がるための支点ができ、しっかりと顔を上げてたつことができるようになると考えられているからです。
ですから、だんだん足腰が弱くなってきて、杖を買おうかなと悩んでいる、ご家族の方がいたら、まずは、歯医者さんに行って、歯の治療を進めてあげましょう。
これはすでに歯が全部なくなってしまっている方でも、入れ歯を早く入れてあげることが大切です。
早期に噛み合わせを回復してあげることで、バランスを崩すことを最小限に食い止めることができます。
歯がない期間がながくなればなるほど、そのバランスに慣れてしまって、回復するのが難しくなってしまう可能性があります。
もちろん、今、歯に困っていない方も、今や30代でも8割が歯周病の時代です。
そのまま放置していると、将来、歯がなくなって、バランスが悪くなって、こけやすくなってしまうかもしれません。
そういったことを予防するためにも、杖を買う前に歯を大事に、歯医者さんでメインテナンスを受けてくださいね。