よく、保護者の方から、小学校の歯科検診で「歯肉炎と診断されたのですが、大人のように歯周病にはならないのですか?」という質問を受けます。
そんな疑問をわかりやすく解決していこうと思います。
まず、歯肉炎という病気と歯周病という病気の違いはなんなのでしょうか。
歯肉炎は、歯肉に歯周病菌が感染して、炎症を引き起こしています。実は、この歯肉炎が進行した病気が歯周病です。
しかし、病気の範囲がまだ歯肉、つまり歯茎だけであり、歯の周りを支えている骨や歯と骨をつないでいる歯根膜には炎症は及んでいません。
つまり、歯を磨いていてしっかりと歯周病菌の繁殖を防げば、もとの健康な歯茎へと戻ります。
しかし、歯肉炎は歯磨きをしないまま放置しておくと、歯周病菌はどんどん体内へ侵入し、歯を支えている骨や歯根膜へと炎症を引き起こします。
そうなってしまうと、歯茎とは異なり、骨は歯周病菌のだす毒素によって一度溶かされてしまうと、まず回復することはなく、破壊されたままになってしまいます。
この時点で、歯を磨かないとどんどん骨の破壊が進み、歯を支えている土台がなくなり、歯が抜けてしまいます。
ただ、骨を溶かされてしまっている時点で、歯を磨いても骨が下がったぶん、歯茎は下がり、もとの健康な歯茎には、回復することは保険診療では難しいです。
このように歯肉炎と歯周病は同じ病気ではありますが、その違いは「完全にもとの健康な歯茎に戻るか」ということです。
歯肉炎は歯磨きをすれば元の健康な歯茎へと回復できますが、歯周病は元の健康な歯茎へは戻りません。
歯肉炎と歯周病の違いがわかったところで、小学生はまず歯周病に進行することはありません。
というのも、小学生のうちは、免疫力も高く、歯周病菌を抑える力も高いからです。
そのため、歯肉炎の段階でそれ以上進行をすることはほとんどありません。
大人の場合は、子供に比べて免疫力が年齢とともに低下していき、さらにお口の中の細菌の構成が歯周病菌が多くなっていくので、歯周病菌に感染しやすく、進行しやすいので、歯周病に進行しやすいのです。
ただし、子供でも歯周病になることはあります。
歯磨きをサボり続けたり、また、白血病など、免疫力が低下しやすい病気にかかっている子供は、歯肉炎から歯周病へと進行しやすいです。
白血病などの病気を除けば、健康な子供でも歯肉炎を放置して、歯磨きをしないと、歯周病になる可能性は十分にあります。
さらに、小学生のうちに歯磨きをせずに、歯周病になってしまうと、大人になったとき、いっきに歯周病が悪化して、まだ20代なのに総入れ歯・・・、なんてこともありえます。
まだ若い時点で、そんな入れ歯になってしまったら、ずっと美味しいものをおいしく食べられません。
そんなことはまずない!といいたいですが、残念ながら中にはそういったお子さんもいます。
ですから、小学生のうちは、歯肉炎になったとしても、一生懸命歯を磨くだけで、免疫力があるので、簡単に歯を守ることができます。
歯磨きをサボればサボるほど、ドンドン歯肉炎が悪化して、簡単には治らなくなります。
もし、小学生のお子さんの歯茎から血が出ていたり、歯茎が腫れているなら、今すぐ歯磨きをさせましょう。
また、歯医者さんにいって、しっかりと汚れをとってもらうと、汚れをスミズミまでキレイにしてもらえるので、歯肉炎があっというまに完治します。
子供のときは、歯茎は免疫力で守られています。
でも、歯磨きをしなければ、当然、歯周病になり、歯が抜けてなくなってしまいます。
そんなことにならないように、毎日歯をしっかりと磨きましょう。