「歯肉炎」という言葉を聞いたことがあると思いますが、歯肉炎とは『歯肉にだけおきている炎症』のことです。どういう病気かについて、詳しく知っている人は少ないです。
よく聞く歯周病という病気は、歯肉だけでなく歯を支える骨やその周りの組織まで炎症が波及していて、周りの組織を破壊してしまいます。しかし、歯肉炎は違います。歯肉炎はまだ、歯茎にしか炎症が及んでいません。歯周病は、この歯肉炎を放置した結果、歯茎の炎症が歯を支える骨や周りの組織に及んで、最終的に歯が抜けてしまいますが、歯肉炎はしっかりと歯磨きをして炎症を抑えれば、元の健康な歯茎に戻ります。
歯周病になる人は必ずこの歯肉炎になってから、歯周病になります。つまり、歯肉炎を予防できれば歯周病にはなりません。
歯肉炎の特徴として、小学生の高学年から、中学生を中心によくみられます。これは、思春期を迎えると歯が成熟して、虫歯のリスクが減少する代わりに、今度は歯茎の方に問題が起こりやすくなるからです。
この時期に起こる歯肉炎のことを特に、思春期性歯肉炎ともよびます。思春期を迎えた女の子は大人の女性になるために、体に大きな変化があるため、ホルモンバランスが変化します。すると、炎症が起こりやすくなるため、男の子よりも女の子の方が歯肉炎にかかる率が高くなります。
しかし、あくまでも歯肉炎のリスクが高まるというだけで、きちんと歯磨きをすれば歯肉炎にならずにすみます。
また、思春期性歯肉炎は日常生活のバランスの取れた食事も影響していると言われています。これは、スナックなどのジャンクフード摂取が増え、お野菜などを取ることが減ることで、ホルモンのバランスがより崩れてしまったりするからです。
また、お野菜はかりに歯磨きをしなかったとしても、歯に汚れがつきにくいので、ジャンクフードと同じ量を食べても歯肉炎になりにくいですが、ジャンクフードは歯茎や歯にべっとりとつくので、1回歯磨きをしないだけでも大変なことになります。
他にも、思春期というのは、不安定な時期でストレスを溜め込みやすいです。そういったストレスも歯肉炎に悪影響であるといわれています。思春期のお子さんがいらっしゃるご家庭はお子さんの歯茎から血が出ていないか、また、口がネバネバしてりないかどうかを聞いてあげましょう。
大したことがないように感じる方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、年に何回か、歯肉炎が悪化して、歯茎がボンボンに腫らして、来院する小中学生をみます。この時期はあっという間に腫れて、痛みが強くなるので、注意してください。
また、ご家族の方が日頃の食生活での栄養面はもちろん、歯磨きもサポートしてあげてください。歯肉炎予防には、歯周病予防の歯磨き粉やデンタルリンスを普段の歯磨きと一緒に使うのがより効果的です。
若いうちは仮に歯を磨かなかったとしても、免疫力が強いので歯肉炎の状態でストップすることがありますが、風邪で体力が落ちたり、成人になった途端に歯周病になって、もとの健康な歯茎に戻らなくなります。
一度下がった歯茎は二度と戻りせん。ですので、小さい頃からの歯磨きを習慣づけましょう。そうすれば、いつまでも健康な歯と歯茎で美味しい食事を食べることができますよ。