歯周病治療で一番大切なのは、『歯周病にならないこと』です。
今歯のトラブルで悩んでいる方はもちろんですが、悩んでいない方こそ、読んでいただきたいです。
「歯のトラブルがない=虫歯がない」と思われがちですが、そうではありません。虫歯がまったくなくても、歯を抜かなければいけないほどに歯周病が進行している場合があります。むしろ、今まで、虫歯になったことがないからこそ、歯周病の自覚症状がありません。
Aさんの歯周病の例
随分前に、初めて来る患者さんが来院されました。
電話の予約で「歯石をとって欲しい」ということでした。私達も、歯が痛くなってから来院されているわけではないので、患者さんが来院されるまでは何の心配もしていませんでした。
患者さんに話を聞いて、最近、少し歯が動いている気がすると言われて、さっそくお口の中を診察しました。私はがく然としてしまいました。
歯周病がかなり進行しており、歯はありますが奥歯のほとんどは、骨が吸収されていました。何本かは歯を抜く必要がありました。
患者さんにレントゲン写真を見せて説明しました。患者さんも最初は、何も痛くないのに歯を抜く必要があることを理解しくれませんでしたが、骨が吸収されているレントゲン写真をみて、納得していました。
それでも自分の大切な歯がなくなってしまうことはとても、とても辛そうでした。私達、歯科医師も抜きたくて歯を抜きません。
でも、グラグラの歯をとっておいたほうがいいのか、抜いて、これ以上炎症が広がらないうちに入れ歯を入れたほうがいいのか、患者さんのこれからの未来にとってどちらが有益かを考えた上で、抜歯をすすめます。
その患者さんは理解を得られたので抜歯が必要な歯に関しては歯を抜きました。残りの歯もこのまま放っておけば抜かなくてはいけなかったかもしれませんが、今は残りの歯は歯茎は下がってしまったものの、まだまだりんごが食べられるくらいの噛む力があります。
今では月に一度のメインテナンスに来ています。そのときに『歯の掃除をしてもらってから、とても調子がいいです。虫歯なったことはないけれど、定期検診ってとっても大切なんだね。もっと早くに気づけばよかった。でも、あのとき行かなければ、総入れ歯になっていたんですね。本当に今ある歯をこれからも大事にします』と言ってくださいました。
そして、『まだ、虫歯になったことがない方こそ、定期検診の重要性を伝えたい』ともおっしゃってくださいました。
Bさんの歯周病の例
もう一人、同じようなお口の患者さんで、現実を受け止めきれず、歯医者さんを転々とした方がいます。
当院にいらっしゃったものの、次回以降は来院されませんでした。あとから聞いたお話によると、どの歯医者さんでも、抜いたほうがいいと言われ、抜くのが嫌で、そのまま歯を放置していたとのことです。
ある日、その患者さんが急患で顔をボンボンに腫らしてやってきました。私達はびっくりして、さらに進行している歯周病の説明をし、やっと抜歯の同意を得ました。その方は残念ながら、総入れ歯になってしまいました。
顎の骨が吸収されていて、安定した入れ歯を作るのはとても困難でしたが、今ではある程度、入れ歯でご飯を食べています。
でも、最初に来た時に、抜かなければならない歯をきちんと抜いて、歯周病の治療をきちんとしていたら、、、と考えると悔やまれてなりません。
今や、平均寿命は80歳を超えます。残念ながら、総入れ歯になってしまった患者さんはまだ50代です。おそらく、お口の状態から、想像すると、30代から徐々に歯周病がスタートし、その後ゆっくりと歯周病が進行していたのだと思います。
もし、30代の健康な状態で、定期検診に来ていれば、生涯自分の歯で美味しいごはんを食べられていたかもしれません。しかし、現実は、その患者さんはまだ20年以上、毎日3食、入れ歯でごはんを食べなければいけません。
おわりに
ごはんをおいしく、最後の晩餐まで食べていただくためにも、歯周病になった方は定期的に歯医者さんで歯の掃除をしてもらいましょう、
そして、まだ歯周病になっていない方も定期検診を受けてください。それが歯周病を予防する一番の方法です。もちろん、毎日の歯みがきもとても重要です。毎日の歯ブラシのやり方を見直すために定期検診にいき、歯茎の状態をチェックしてもらえば、健康寿命を長くすることができます。
あなたは、どんな未来を送りたいですか?あなたの未来はあなたにしか決定できません。ぜひ、一度、歯科検診に行ってみてくださいね。